appleJam Best of the Best 7Club 2011

2011年の7大クラブを振り返っていて良く出来た音楽にはマンネリというものがないことを改めて痛感、今回は21世紀のベスト10も(10年経ってのとりあえずのですが)選んでみました。日々ふいにまたガーンと新しい衝撃をくれる音が若い人の音とも限らず、今で言えばマリア・マルダーやトレイシー・ネルソンといった大ベテランの音だったときなんか特に嬉しくなります。若手の音で言えばブライス・ミラーやシャマー・アレンにトローンボーン・ショーティなんかがそうですが、根っから奔放な音を出していながら古いものともちゃんと繋がっている確かさがいいのだと思います。appleJamでは今後も7大クラブを中心にそういう盤を追いかけていきますのでどうぞご期待下さいませ。(2011年12月27日)

Best of Blues Club

何時か作りたかったというブルース、R&B、ゴスペルだらけの黒人音楽アルバム
Tracy Nelson Victim of the Blues
本作のこのコメントを書く今この瞬間まで、彼女がボビー・チャールズと
別れていたことを知りませんでした。とはいえ昨年のボビーの他界が何
らかの作用を彼女にもたらしたであろうことはつい想像してしまいます。
時は1960年代、まさにブルームフィールド達がフィルモア・ウェストでぶい
ぶい言わしてた頃から彼女もまた何時かは純黒人音楽のアルバムを出し
たかったそう。そこから半世紀を経て今それが実現したのも、きっと人間
生きているうちにやりたいことはやっておかないと、と思ったのかも知れま
せん。その反面、決して古典に執着はせず#2.Load a Hot といった最近の
ブルース作品もカバーする辺りやはり彼女は今も進行形のブルース娘
であることを実感。盟友とも言えるマーシャ・ボール参加の#3.Shoot
My Baby
は個人的に本作で最もお気に入りになったジミー・リード・
チューン。かつてマーカス・ミラーやD.サンボーン達と共演したTV番組
で抜群のゴスペル・フィーリングを全開していたトレイシーがここに居る
と感じたのがラスト、ジョン・コーワンとのデュエットで歌う#11.Without
Love
。このヘヴィさは格別、如何にものしめくくりにふさわしい曲です。
2011 輸入盤国内仕様 BSMF BSMF-2222

最近のラッキーからは猛烈にオーラが出ている、本作でもそれを実感!
Lucky Peterson Every Second a Fool is Born
一秒ごとにおバカは絶えない...それって若いときの自分だ!ってここでは
あまり関係ありませんが、冒頭から快調に飛ばすラッキーの本作もまた
文句なし絶品のブルース・エンターテインメント・アルバムに仕上がってい
ます。ラッキーの(&奥方タマラとのも)近作はすこぶるショーアップされた
ブルースが爆発していてまさに気分も爽快。#1.Ain't I Going to Boss Me 
での重量感と、 #3.Changing Ways の絶好調奥方タマラ(だと思う)にも大
満足しつつ、特に#1.の後半はすこぶるドラマチックに展開する!表題曲
#4.Every Second a Fool is Bornではシンガーとしてのラッキーのソウル
フルさも存分に楽しむことが出来ます。ラッキー、今が最高に旬なのかも。
2011 UK JSP JSP-8831

Best of Rare Blues Club

ナチュラル・グルーヴ感たっぷりのジューシーなギターが魅力
Roach Thompson Blues Band Honky Tonkin' with Roch
本作で初めて知ったブルースマンですが文句なしアルバム丸ごと
今年度MAXに最高峰の作品と確信します。もしや一部の曲はオリジ
ナルかもですが、既知の有名曲におけるカバーセンスも抜群、曲を
完璧に自分の曲にしています。#1.Honky Tonk に現れるこの貫禄、
#6.San-HoZayでの小気味よさ、いずれも程よいテンションでリラック
ス感もあるのが特徴。これは多分オリジナルか、#14.Just Pickin'
イントロのリフの段階から腰がムズムズして勝手に踊り出す感じ、
ギタートーンが地味派手に渋いのもツボにはまる大きな要因です。
2011 USA HSM HSM5054-2


低予算のインディーズ・ブルーズン・ソウルが耳にはゴージャスに響くというこの真実
MauriceDavis "Play" Boy
一見似た路線でも、デルタのマラコとミシガンものとは此処がやっぱり
違うと感じた瞬間。言葉では表現しにくいその綾は例えば#2.Breaking
 Up Somebody's Home
のホーン隊に如実に現れている由、なんちゅうか
体育会系のアンサンブルになるんですよね。その辺りより色濃く出てるの
が#6.Turning Point でここでは歌のハリにもミシガン湖の風を感じます(=
強風の意)。 アルキンのカバーチューン #4.Cold Womenwith Warm Hearts
でも低重心のゴリゴリ感が漂い、実に全くこの辺りモーリス独特のテイ
ストなのかも知れません。というかチープに作ってもゴージャス!個人
的に最もお気に入りは#5.License to Steal、このノリが好きです。
2011 USA Touring Records

Best of Blues Woman Club

低重心でぐっと渋く仕上げた永遠のヤングレディ、マリア・マルダー会心の作!
Maria Maldaur Steady Love
マリア・マルダーを聴くと必ず思い出す楽しい記憶があります。それは
時は多分1975年頃、勤務していたショップの同僚がモントルー・ジャズ
フェストに当時発売になったばかりのソニーの新型カセット・デンスケを担い
で観に行った、そのみやげに貰った沢山のフェスト私家録音のカセット群の
中にあったマリア・マルダーのステージのなんと生々しかったことか。マニ
アっぽくバイノーラル録音 されたステージはマリアを呼び出す場内アナウ
ンスの段階からもの凄い肉薄感。まさに心臓ばくばくの超リアルな音に
当時ソニーのオーディオ技術は世界の先端を行ってると実感しつつ
毎日毎日朝までヘッドフォンでモントルーのテープを聴きまくったもの
でした。本作はそのとき聴いたマリアの弩級のリアル感を伴っていて
一瞬で時が40年近く巻き戻った気分がします。#3.Soulful Dress
#7.As An Eagle なんか特にセクシーで凄ッ!な曲。
2011 輸入盤国内仕様 BSMF BSMF-2240

ジプシーの渋い歌にひたすら魅了される極上ブラック・ミュージック
Gypsy Elise & the Royal Blues Watermelon
こんなに渋い女性を知らなかったとは!既に00年と10年にも
リリースがあるジプシー・エリスのこれは2011年発売の三作目。
ギターがJohn Lisi なのもニューオリンズ・サウンド・ファンの目を
引きそうで、実際#8.Deliver Me なんか聴くとソロとカッティング共
に独特のジョン・リシ節に魅了されてしまいます。#1.Don't Touch
that Kity Cat
の軽やかさもゴキゲン。エリスは多分自身生粋の
ジプシーなのを誇りに生きてきた人なのかも。ラスト#9.Lonely
Gypsy
は自然とエリスの様子を想像してしまう歌です。
2011 USA Independent  

Best of

フィドルのソロ・パフォーマンスだけでオーケストラを聴く気分になるとっても凄い人
Cedric Watson et Bijou Creole Creole Moon Live from Blue Moon Saloon
大抵は当店取り扱い後に誌面を飾ることが多いルイジアナ盤ですがセドリックのこの盤は
先にBSR97号p.93ではたのじろう氏が記事に。それによりますと本作をライヴ収録した店は
セドリックの自宅から徒歩圏内の場所とのこと。まさに自身のフィールド内で常まんまのパ
フォーマンスを繰り広げた1枚です。実際そのアットホーム感は#3.the Corner Postのフィド
ルにも如実に現れていて、06年で感じた気分、オーセンティックなのに何かがとても新しい!
という軽いコーフンがまた蘇ります。中間部、クリスのギターも抜群の味わいで著しいクリスの
成長に激しく感動する瞬間。セドリックは仲間の魅力をも最大限に引き出す点で実に素晴ら
しい演奏家です。セドリックはアコーディオンも弾きますがやはりフィドルで突出した魅力を
発揮、キャンレイ・フォンテノー作の#7.Canray's Jig のソロ弾きは釘付けになります。
2010 USA Valcour Records

もはや迷いがないどころか、黙ってオレに付いてこい的な存在感が充満しています
Jeffery Broussard & The Creole Cowboys
 Return of the Creole

時代の流れとは関係なく、自分は苦み走った本格派のザディコを
やるためにここに居るんだという感じの手応えが凄い盤。07年盤で
書いたコメントがそのまま今回も当てはまります。 〜ビギナーには
決して耳ざわりの良い音ではない一方で、彼ほどファンに強く愛され
ている人は少ないのもまた事実。エンタとして売れないことがザディ
コフォース解散の原因だったとしても、ジェフ的ザディコの路線は変え
ないで欲しいなと願っています。〜との願いは本作でもかなえられま
した。例えば#3.I Love Big Fat Womenでの高密度かつ濃厚な音作
り、ジェフリーに心髄しているという熱血フォロワーがシーンに多いと
いう話も判る気がします。最近はフィドルの腕も上げた模様で恐らく
は#8.Old Carpenters Waltzで冒頭から終始曲をリードする左chのフィ
ドルがジェフリーかなと思って聴きました。腰の入り方にアコーディオン
と共通した感じが有りますよね。もし違ってたらゴメンナサイ。個人的な
お気に入りは#12.Hard To Stop 、ザディコフォース時代を思い出します。
2011 Maison de Soul MDS-1091

Best of New Orleans Club

どんな道を行く人かまだ判らないけど無限かつ未知の魅力を満載したシャマーが放つ意欲作
Shamarr Allen and the Underdawgs 504-799-8147
07年盤"Meet Me On〜"で受けた、爽やかにも強烈な第一印象から
早四年。本作では何と予想もしなかったハードなヒップホップ系ロック
チューン#10.Uh Huh! が飛び出したり、まるで松山ケンイチが劇中で
歌う渋谷系チューンかみたいな #4.Friend Zoneと、かなり多面的かつ
攻撃的な作りが印象的です。#5.Think Like You はまるでニューメタル
みたいに聞こえるし#7.You're My Doctorはオヤジ世代の私にはAOR
ミーツ・ヒップホップの構図に見えるし、これは聴く人の感性や世代に
よって同じ曲でも大きく印象が変わりそう。個人的には#14.Out the
Window
にもう一人のニューオリンズの偉大な若手tp、Cristian Scott
との類似点を垣間見た気がして続編がとても楽しみになりました。
2011 USA P.O.M.E. Music Group


まさにappleJamらしい選盤、こういった盤はまず他店では見ない盤
ここでもまた目の幅涙のSt. James Infirmary が聴ける!世界中で録った極上生のブラスバンド・ミュージック
Brice Miller presents A New Orleans Kinda Party feat.Mahogany Brass Band
これはニューオリンズのエキゾチックなバックビート・ブーツィ・シェイキン・ミュージックのエッセ
ンスです!生々しくもファンキーな、かつ一切無加工の、アンタのケツをぶっ飛ばすに違いない
音楽ナノダ。ってな感じのメッセージがやけにリアルな、実際にも激しく荒々しいブラスバンド・
ミュージックです。中でも#4.I'll Take You Thereの超生々しさは格別。現実にストリートでこんな
バンドに遭遇したら、もう何処にでも連れてってくれ状態になることは確実。地元ニューオリンズ
はもとよりフランス、デンマーク、スペインの各地でストリート録音も有りで収録された感じのディ
スク。だからこそ余計に場の空気までキャッチした、そんな現実感が凄いのだと思います。クレ
ジットはないものの、それがまさにBrice Miller のペットと歌だと感じる7分半の長尺トラック、
#8.St.Jamesは曲自体私が死ぬほど好きな"St. James Infirmary"でもう昇天!
2010 USA Independent

Best of Jewel Jazz Club

もしブッカー・リトルがその後も生きていたらこういうのをやったかも的な作品
Melvin Jones Pivot
アトランタ・ベースの気鋭のトランペッター、メルヴィン・ショーンズの
これがこの春リリースされたばかりのデビュー作。全編が王道中の
王道を行くストレートなサウンド。1980年代風ネオバップ・スタイルが
中心ですが、私の場合だと後半#9.Do You Work Kalogane?から次
の#10.Flights Beyond 辺りの流れがまるで既知のアルバムのように
耳馴染んできます。一方で次の#11.FunkytownShuffleは明らかに
新世代のファンキー・テイストながらもやっぱり好きなんだと納得。
#12.Chaos Grooveでのブッカー・リトルっぽいシリアス・サウンドも
含めてメルヴィンのトランペットの粒立ちの良さにそそられます。
2011 USATurmaround Records


ストレートアヘッド+ちょっぴりのフュージョンのブレンド具合がもう最高!
Alphonse Mouzon Angel Face
1969年、20歳にしてギル・エヴァンスとの初吹き込みに始まり71年には
ウェザー・リポートに参加。当時からマルチな才能を発揮、本業のドラマー
としてだけでなくプロデューサー、クリエイターとしての活躍も華々しい現役
バリバリの生ける伝説の一人。本作ではアーニーワッツ、ウォレス・ルーニー、
アルトゥーロ・サンドバルに大野俊三といった超大物ホーン奏者とシダー・ウォ
ルトン、ケニー・バロンといったやはり超大物のピアノ奏者を配置、何ともゴー
ジャスなメンバーによるゴキゲン度MAX作品に。全曲が素晴らしいですが
特に中盤#5.Blues Cluesや#6.Angel Faceはツボのツボ。#11.Night Walker
の爽やかなファンキー・テイストにも時代を忘れて没入してしまいます。
2011 USA Tenacious Records TENAC-9216